すやまたけしの世界を‥‥

はじめに

改定に伴い新しい教科書がこの春(2016年度)から使用されることとなる。各市が採択した教科書を使うわけだが、教育出版の「伝え合う言葉 国語3」に掲載されていた「素顔同盟(すやまたけし)」が平成28年度 中学校用教科書「伝え合う言葉 中学国語」から掲載されなくなってしまった。書籍は絶版となっているゆえ、おそらく今後、生徒の目にも触れなくなってしまい、忘れさられていくものと思われる。現在、すやまたけしの作品を読もうとするなら、各図書館に所蔵されている書籍を探すか、教育出版のサイトでのみ作品が読める。

本当に大切にしなければならないもの

すやまたけしの小説を読むと、「根源をたどると」という思いを、感じずにはいれない。人が築いてきたもの、その多くは、不確実な私利私欲に満ちたうわっぱりを上書きすることで成り立っており、初心に懐いた純粋なる理想・希望・夢はかすれかけていることを、思い起こさせてくれる。また、それは「自然 (nature ネイチャー)」という言葉とも結びつく。自然に育まれてきたにもかかわらず、自然を顧みようとしない現代。自分の思いがありながら、素直で自然な自分らしさを押しつぶして、生きていくことを強いられる社会。うぶでナチュラルな各々の良さを理屈という枠に閉じ込めて、さらに人工物で蓋をする世の中。ひるがえして言うならば、愛のない世界と言えよう。すやまたけしの文章には、われわれが本当に大切にしなければならないものが描かれていると感じるのである。

  • 「『霧笛』(「火星の砂時計」 株式会社サンリオ 1988年 現在は絶版 に収録)」では、マージという老人が主人公の少年にもらした「私の作った運河は本当にみんなのためになったのだろうか。」という言葉が印象深く残っている。マージが作った運河によって栄えた町が、運河によって栄えたことによって、その後の発展の足かせとなってしまうという皮肉な顛末をたどる。それゆえ、先のマージの言葉が強く浮き彫りとなるのである。、

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です