Vol.56 自粛要請

 今年の流行語には選ばれなかったが、「自粛要請」。今年一年を締めくくる集約点は、これにあると思う。
 自粛することを強制とまでは言わないが、強くお願いする。人自らが、自分で枷をかけて抑制する社会。しかもそれが新しい生活習慣であると念押しするかの社会。
 国民一人一人が自ら気をつかって生きるのは、当たり前だしよくわかる。ゴミの分別にしても、一般家庭でも当たり前にするようにはなっている。ただしゴミ袋の有料化という枷がつきはするが。それでも人々は、マナーを守ってより良い社会を見据えて心がけているものである。道端や駅のホームにあったタバコのポイ捨てもほとんど見られなくなった。もちろん、歩きタバコ禁止やら禁煙区域を設けるなど施策によって、吸える場所が限られてきたのと吸える機会が減らされてきたのが原因ではあるが。そうして改善されたところもあるが、タバコを吸う人が少なくなったのが根源にあるのは事実だ。
 自粛しなければならない項目や範囲・時間が世の中に増幅してはいまいか。政府はできる限り安く、あわよくばタダでできる自粛を要請するばかり。「なにかあっても当局は責任を負いませんが、うまいこと経済を回すように一人一人が動き、金を使うことを拒みはしません。」という姿勢だ。自粛警察が緊急事態宣言の時に話題となったが、お偉方からすれば、「下々が自ら規制しあって安く済むのなら、都合いいし、社会問題であろうと、どうでもいいや。」ということだったのだろう。
 庶民の弱いところ、赴く志向へと落とし込む図式。最後の最後は「自粛」で人々にお願いする。切り札の「自粛」もこう乱発されては、晴れない空気に煙をまかれるがごとく、閉塞感が助長されていく。
 「自粛」で全てを乗り切れないは、分かっているはずだ。「極力外出をさけ、接触の機会を減らすけれど、商店は開いているから行ってダメなわけではなく、極力気を付けて行動するように。誰も外に出ないと商品が売れないでしょ。うまいこと自己責任で頑張ってね。」

 自粛という タガをかけられ 閉じ込もる 
 茶番でも 本番社会に 要請す
 丸投げと 同じ絵柄の 自粛かな

 矛盾することでも、仕方なしとすることが、どれだけ若者や子供達に悪影響を及ぼしているか、考えてほしいものです。
             2020.12.2

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