Vol.46 モチベーションが保てない

モチベーションが保てない

 整合性のない活動の中に見える切符を切ることのできないもどかしさ。

※ここでは「切符を切る」という言葉を「切り札」や「切符がいい(気風がいい・すがすがしい)」と関連付けて「良き決断を下す」的な意味で使っています。

 忖度は我が国の大切な心の柱。しかし、またこれが悪用される気がしてならない。国のトップは、自らが切符を切れる法案を通したが、自分では決して切らない。「専門家の意見を聞いて、判断する」といった具合で、責任が自分に直接向くことを怖れている。そしてその裏側では、県知事や市区町村長が自分より前に、率先して切符を切ることを忖度させようとしているようだ。自分のところに責任がおよぶ前のところで、責任の泥をかぶってくれるよう模索しているとしか思えない。

 その空気は巷にも影響をあたえる。身近で低い次元からの「お願い」という形をとった忖度させようという気運である。日本人は真面目であるから「このご時世だから仕方ないよな」と報いることを前提にして施される。そして、巷(現場)は「何であれはああで、これはこうなの?」といった整合性の見えないもやもやの中に置き去りにされる。

 自分たち自らで切符を切れない状況下で、御触れを待ち、それとなくお上が望むだろうことに忖度されられるストレスは尋常ではない。自分たちで考えたり、判断したり、決めたりする機会が全くなく、こうだとおろされたことをロボットのごとく遂行するのだから。
 何かあるたびに、こうやって次々に骨抜きにされていく構造を持つ社会。ああ、モチベーションが保てない。

 「健康のためなら死んでもいい!」に似たパラドックス感。ああ、モチベーションが保てない。  2020.3.18

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